ある地域だけに限られて分布する植物を、その地域の固有種という。
その地域の植物相の特徴や成り立ちを考えるさいには、固有種の生態、分類学的特徴、近縁種との関係などが大きな意昧をもつ。
神奈川県に固有な植物は、丹沢の岩場に生えるサガミジョウロウホトトギス一種類だけである。
神奈川県という行政区画は、生物学的には意味のない人為的に定められたものにすぎない。
固有植物が一種類あるだけでもりっぱなものである。
その範囲を富士、箱根、伊豆を中心にした地域にまで広げると、サンショウバラ、ハコネコメッツジ、ワダン、イソギク、タンザワヒゴタイ、ヒトッバショウマなど、多くの固有種がある。
これらをフォッサ・マグナ要素の植物という。
フォッサ・マグナとは「大きな溝」を意味する地質学上の言葉で、糸魚川-静岡構造線の東側の地溝帯に対して、ドイツ人ナウマンが名づけたものである。
この地溝帯の日本海に近い部分を除いた南半分の地域には、
ほかに見られない固有な植物が多く分布している。